ESGの取り組みEFFORTS TO ADDRESS ESG

ESGの取り組み

次の10年に向けて動き出したイノベーション

代表取締役社長室 雅文

取締役多田 智子

「常にイノベーションを心がけ、仕事に取り組む」を行動指針のひとつとしている株式会社ムロコーポレーションでは今、次の10年に向けて積極的に動き出しています。「イノベーション」は、多様な人財が活躍する環境で育まれます。株式会社ムロコーポレーションでは多様性を大切にしつつ、新事業開発に全社一丸となって挑んでいきます。 

  • 室 雅文
    代表取締役社長室 雅文
    1968年大阪生まれ
    信州大学工学系大学院生産システム工学科卒業
    2013年社長に就任
  • 多田 智子
    取締役多田 智子
    特定社会保険労務士
    法政大学大学院イノベーションマネジメント専攻卒業
    MBA取得

今回は、社長の室 雅文と当社初の女性取締役(社外)である多田 智子氏が、SDGsの視点から株式会社ムロコーポレーションの事業や経営について、対談しました。

SDGsについて

Q
TVや雑誌などでは各企業がSDGsへ積極的に取り組む特集がなされ、そして若者の間ではSDGsへの関心が高くなっている時代、ムロコーポレーションとしてはSDGsのどこに力を入れていこうと考えていらっしゃいますか?
室 雅文
企業には「Going Concern」、つまり永続性・継続性が求められます。これは「Sustainable」=持続可能な、に通ずるものがあります。企業は存続し続けることで雇用と消費を生み、取引先を含むさまざまなステークホルダーに適正な利潤をもたらしています。この時点でSDGsに寄与していると思いますが、今後当社としては特に脱炭素の取り組みに力を入れていきます。これは、2050年二酸化炭素排出実質ゼロを達成するという日本政府の方針を受けた客先からの要望でもあり、当社でも対応していかなければならない課題です。非常に困難な目標ですが、計画を立てて取り組んでいきます。
多田 智子
ビジネスを通じて持続可能な社会の実現に寄与することは、今後益々、求められていきます。
併せて気候変動問題における世界的な動きは急速に進んでいますね。
「経済成長とCO2排出量は比例している」との今までの常識から、「脱炭素と経済成長を両立していく」必要性を認識し、取り組んでいく必要があります。従来は国が主導でしたが、これからは各企業が主導となって推し進めていく時代であると認識し取締役会でも議論していきたいです。
室 雅文
現在自動車業界では、ゼロエミッションを実現するために電動化・自動化へのシフトが進んでいます。これからの部品には、自動車の電費・燃費向上のために軽量化、高機能化が一段と求められます。新たなニーズとしてはサーマルマネジメントのためのユニット等があり、内燃機関系の仕事が減少していく中、新たなニーズに基づく仕事を発掘してエンジン・モーター効率向上等に当社の得意領域で貢献していきます。
また、カーボンニュートラル実現に向けて、日常的な改善活動やさらなる省エネへの取り組みを従来以上に強化していくと共に、自社内でも再生可能エネルギー発電等を推進していきます。
多田 智子
こういった取り組みを真摯に考えていく企業が集まってビジネスを展開することで会社も社会も良くなっていく循環が今後の経営課題の1つになることは必然です。我々もこれらは製品・サービスの価値の1つであると考え、製品設計・プロセスの見直し、省エネルギー化、使用するエネルギーの見直しなどタスクは山積していますが、世界中の企業の課題ですので、改善が得意な当社の強みを活かし、前向きに対応していきましょう。
Q
企業のCSR活動である「地域社会への貢献」として、被災地には寄付をしてきましたが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか?
室 雅文
はい、これは私が社長に就任してから始めました。大きな災害が起こった時に、取締役会で協議してお見舞金をお送りしています。支援活動を行う動機としては、実際に東日本大震災を宇都宮で経験して「大変な被害にあった被災地の役に立ちたい」と思ったからです。当社の経営理念の1つに、地域社会に貢献するというのがあります。日本は本当に災害の多い国です。私は阪神淡路大震災も姫路で経験しました。いずれも最大被害地域からは微妙に外れていますが、それでも被害は大きなものがありました。温暖化の影響なのか災害のサイクル的なことが原因しているのか、近年は特に大きな災害が多いと思います。災害大国日本だからこそ、困った時には助け合い、相互支援をしていくことで持続可能な社会にもつながると考えています。
多田 智子
被災地支援に関しては、毎回、取締役会でも議論されるのですが、災害地支援が会社としてあたりまえになっている点も感動しました。室社長のお考えに役員一同賛同しているのを目にして、困ったときには助け合うという温かい心をもった経営陣・社風であるのもSDGsの実現にプラスに働いていると考えています。
<近年の被災地支援実績>
 2016年 熊本地震義援金
 2017年 九州豪雨朝倉市災害義援金
 2018年 西日本豪雨 呉市災害義援金
 2018年 西日本豪雨 倉敷市災害義援金
 2019年 台風19号 長野市災害義援金

グローバル化について

Q
「グローバルな発想でビジネスを展開する」という当社の行動指針についてお聞きしたいと思います。社長がここまでグローバル化を意識され、進めたいと思うきっかけや理由はなんでしょうか?また、グローバル化にはいろいろあるかと思いますが、社長の思うグローバル化とはなんでしょうか?
室 雅文
ここで言っている「グローバル」は、大きな視野でという意味だと思っています。当社規模の会社だと社員も内的思考を持つ者もおり、海外に出たり、新しい挑戦をしたりということをしたがらない社員もいるのは事実です。しかし、より全体を見通して自分が納得できる仕事をするには当社の海外を含めた組織のシナジー効果、人的戦略などを包括して見ることが肝要です。
それによって、意識・知識・発想が変わると思っています。大きな縛られない思考から出て来たビジネスであれば、別にそれがグローバルでなくてもよいのです。グローバル化とは、地域や職種、人種や言葉等に影響されない自由な活動のことだと思います。 
多田 智子
今後、どのような社員に海外でどのような経験を積んで欲しいですか?
室 雅文
グローバルというところでは、私は出張ベースですが海外で延べ1年以上仕事をした経験があります。最初に行ったのはアメリカで、20代半ばの頃でした。その後も度々海外出張に行くことになるのですが、どこの国でもどんなところでも、行ってみなければ分からないということが分かりました。製造業なので現場も然りです。実際に行って、見て、いろいろやってみることが大切だと思います。これは日々の行動も一緒です。やってみないことには分からない。やりもしないであれこれ言っていても仕方がない。このことが一番よく分かるのが海外の経験ではないかと思うのです。ですので、特に若い人にはどんどん海外に出て、いろいろやって欲しい。失敗もするでしょうが、若い頃の失敗は財産です。その失敗から学び、活かせるのが若者の特性です。そうすることで経験値がどんどん上がって、自己の成長につながると思います。私には海外駐在の経験はありませんが、ぜひ海外駐在もして欲しい。人生100年時代のほんの数年です。これからは特にグローバルな発想とチャレンジ精神がかつて無いほど必要な時代になると思います。当社の従業員にも、過度に恐れず、小さくまとまらず、何事にもチャレンジする人になって欲しいと思います。
多田 智子
チャレンジですね。当社においては海外拠点もたくさんあり、その歴史もありますのでその中で経験を積めるのはメリットですよね。
現在、女性の取締役は私1人ですが、役員の多くが海外経験を積んでいる方々ですので多様性を受け入れる気質があるのを感じました。
私の意見もしっかりと聞いたうえで、平等に議論できるのはありがたいことです。
やはり、海外経験含め幅広い環境下でのご経験から、多様な価値観を受け入れ、自社のポジション、戦略、存在意義を世界基準で考えることができるのだと思います。
加えて、海外での経験は日本では得られないものがありますよね。
当社においては、赴任前にフィリピンで数か月間英語教育を実施するなどサポート体制も強化していますよね。
引き続き年齢や性別にとらわれず、やる気と能力のある人材にチャレンジする機会提供をしていきたいですね。

新規事業創設に向けて

Q
次は、新規事業についてもご質問します。この先10年後を見添えて新しいビジネスにも、現在のビジネスの発展にも常にチャレンジしていくことを公言しておられますが、イノベーションが起こる土壌の構築も必要ですよね?
室 雅文
はい、「常にイノベーションを心がけ、仕事に取り組む」は当社の行動指針でもあります。
これからは、現在、社内に浸透しているイノベーションの概念から更に発展させていきます。現在当社で手掛けていない製品、もっというと無形のサービス提供も含め、枠にとらわれない概念をもって新しい事業領域について議論していきたいと考えています。
多田 智子
ダイバーシティ経営、まさに多様な人材を活かし、その能力を発揮できる機会提供ができる職場環境を醸成していく必要があると考えています。ジェンダー平等への取り組みとして、女性の管理職登用、工場の現場には女性従業員も働いており、働きやすい環境整備ができていると感じています。職場環境のみならず、女性の育児休業取得率も過去6年実績で100%でしたよね。ハードとソフトが両立しているのも素晴らしいです。今後の女性のリーダーシップについても大いに期待しています。
Q
世界の流れではガソリンエンジンやディーゼルエンジンを持つ自動車が今後減っていくと言われております。ムロコーポレーションの売り上げは、ほぼエンジン・ミッション関係の部品で占められておりますが、今後の持続可能な成長のために、ムロコーポレーションとしてどのような新規事業創設を目指しておりますか?
室 雅文
EV化加速による内燃機関系部品の市場縮小に伴い、当社も新事業を興していく必要があります。新事業については、コア技術であるプレスを中心とした金属部品事業、子会社であるいがり産業の樹脂部品事業をメインに新しい領域を開拓しつつ、その他にも何か社会課題解決型の事業ができないかと思っています。具体的に既に事業化を進めている役員もおりますし、検討中の案件もいくつかあります。最近では産学連携や外部コンサルタントとの協業も増えて来ています。M&Aという手段もあります。それらの中から、次の柱となる事業を育てていきたいと思います。
多田 智子
そうですね、現在、当社では新規事業創出に積極的に取り組んでいますね。
2018年には新規事業のアイデアを期間限定のプロジェクト体制で検討しましたが、2021年からは複数部門で新たなる検討を行い、経営陣へのプレゼンと選考を経て数件が事業化のための本格検討に進みましたよね。この活動を通じて、会社全体で新規事業にチャレンジする意識が醸成されつつあるように思います。
特に、失敗を恐れずに立ち向かう、多彩な才能、若い力が必要不可欠だと感じています。新規事業創造というのは、まさに人が全てです。ゼロからものを創るときには、社内外の人を巻き込んで、リソースをうまく使いながら新規事業を組み立てていく。今の当社はまさに、このような経験ができる場でもあります。
現在の新規事業においても、ご苦労が多いかと思いますが、経営理念に基づいた中長期的な視点から、次世代の幹部教育を充実させ、新しい環境に適応できる社風を醸成できることが肝要であると考えています。ワクワクしますね。

メッセージ

Q
最後に、将来、新規事業創造に携わりたいと思っている若者に向けてメッセージを。
室 雅文
現在、世界も日本も大きな変化の時代を迎えていると思います。自動車業界も「100年に一度」の変化の大きな時代だと言われています。大きな変化を迎える時は、考え方や常識が大きく変わる時だと思います。EV化・電動化・IT化・デジタル化等々により、何かが何かに取って代わる、何かの機能の出現によって今まで主役だった機能が不要になる。新しいことを創造したり、従来の構造を変えたりしていくには、従来の枠に囚われない新しい発想が必要です。こういったことは若者の方が向いているので、ぜひ若い力と発想で新しいことにチャレンジして行ってもらいたいと思います。一緒にやりましょう。